新しいものはいつも横浜からはじまった
家具の概念を越えた家族の一員
「かながわの魅力伝え隊」第6回は、横浜・元町で洋家具を販売する、株式会社ダニエル(横浜市中区)をおたずねしました。
家具職人の製造現場を見学させてもらえるということで楽しみにやって来ました!
お相手してくれたのは、株式会社ダニエルの咲寿さんです。
横浜洋家具物語
神奈川県横浜市中区。横浜開港当時居留地に暮らした外国人たちの御用達のお店が集まったことから始まったショッピングストリートの街・元町は、かつて商人魂にあふれた町と言われています。
今回は伊勢原工場と横浜工場の2つを見学、“横浜洋家具発祥の地”の魅力をたっぷりと教えてもらいました。
「工場を見学する前に西洋家具の歴史についてお話させてください。」と咲寿さんが口をひらきました。
「今から140数年前、横浜に一つの新しい文化が根を下ろしました。それは西洋家具を製造する技術でした。」と咲寿さんが説明してくれました。
1854年、横浜に黒船が来航し、多くの外国人が居留するようになりました。しかし、長い間畳の生活をしていた日本には西洋人の生活に合った家具、調度品がありませんでした。
そこで、1863年、英国人ゴールマンが横浜・元町に欧風家具会社を設立。横浜クラシック家具が作られ始めました。
同年、英国人のゴールマンという人が馬具安と呼ばれる横浜に住む馬具職人・原安造に椅子の修理を依頼。ゴールマンは、修理の出来栄えに感心したことから、本格的な洋家具の製作を注文。こうして、日本の洋家具製造技術の歴史は横浜という異国の地で見事に花を開かせました。ゴールマンの要求はきわめてレベルが高く、原安造は本場の欧米家具に少しもひけを取らない横浜洋家具(横浜クラシック家具)の誕生となったそうです。
海を越え、何世代にもわたり語り継がれてきた140年の歴史。横浜洋家具の歴史の長さを感じながら、さっそく工場の見学です。
はじめに、伊勢原工場へ向かいました。材料となる木材の乾燥庫に案内してもらいました。
「当社では、材料となる木材は北海道産・樺桜(かばざくら)を使用しています。約半年、天日干しにて乾燥をさせます。それから、機械乾燥釜に入れ、含水率を下げていきます。」と咲寿さんが説明してくれました。
乾燥作業を終えた木材は、どの家具に適しているか振り分けていきます。後に、各部材に木取りされ加工されていきます。ひとつひとつの木の表情(木目)を見ながら、判別していくのです。こうして、ようやく家具の製作のスタートラインに立つことができます。
職人さんは手に触れるだけで、どの位乾燥しているのか、良質であるかが分かるそうです。木の個性を理解しているからこそ、木の個性を生かすことができるのですね。
続いて、ソファの脚となる部材の製作工程を見学させてもらいました。
「こちらは、カウチソファの脚となる部分を作っています。角材をセットし、削っていきます。丸みを帯びてきたところで、印を付けてさらに削り込んでいきます。」と職人さんが説明してくれました。
「触ってみますか?、」と咲寿さんが差し出してくれました。感触は・・・とってもなめらかでした!
細かな返しの部分は、決して機械では出来ない造り具合だそうです。ひとつの角材からこうした優しいフォルムの脚部分になるまで、ひとつひとつ想いを込めて。職人の熟練した技と丁寧な作業ぶりが伝わってきました。
「続いては、機械では出すことができない職人手仕事の様子をお見せします。」と咲寿さんが嬉しそうに案内してくれました。
木材を手で彫るからこそ、工場生産では出せない家具の美しい曲面を表現することができる。驚いたのが、切断から組み立てに至るまですべての製作過程の確認を職人自身の眼と繊細な指と掌で行っているということ。
職人さんの丁寧な手作業によって作りだされる曲面に、思わず見惚れてしまいました。
すると、「私たち職人が満足していないものを商品として世の中に出すことはできないと考えています。職人が納得したものだけがダニエルの横浜クラシック家具として、お客様の眼に触れることとなります。」と職人の佐宗さんが説明してくれました。
こうした職人さんのひとつひとつの手作業が、家具を使用するお客様の満足感に繋がっていくのだと思いました。
想いを重ねていける家具
横浜工場へ移動です。装飾や縫い付けなどの作業工程を見学させてもらいました。
「ここでは、ソファのクッション部分のセッティングやイスの座面・背面への生地の張りつけなどを細かな作業を行っています。クッション張りでは、柔軟性、感触を極め、その上に革や布地を張っていきます。職人の力の入れ方や微妙な張り具合で良し悪しが決まります。特に、スプリング(バネ)やボタン締めなどは職人の経験と技が光ります。」と咲寿さんが説明してくれました。
直接目に見えない部分にも、こうした職人の技と想いが込められているのですね。特に、ソファのクッション部分の微妙な力の入れ具合は、機械ではできない繊細な作業だそうです。
家具を買うとき、見た目の印象や雰囲気などを優先して選んでいました。
今度選ぶときは、家具の見えない部分のこだわりもじっくり見ながら選びたいなと思いました。
「お客様の家具物語は、使えば使うほどにその人の想いを刻んでいきます。家具と一緒に過ごした時間は、家族との思い出を共に刻み、継承していく。
百年使える家具というのは品質の良さだけでなく、三世代、四世代にわたって思い出を刻んでいくという意味も込められています。これがダニエルの家具が“百年家具”と言われるゆえんです。」と咲寿さんが話してくれました。
“百年家具”という意味には、品質の良さとその人の家具物語が詰まっているんですね。でも、大切な家具が壊れてしまった場合は寂しいですね…。
「大丈夫ですよ!ダニエルでは“家具の病院”を併設しています。大切な家具が壊れてしまっても、職人たちが時間と手間をかけて見事に蘇らせてくれます。時には、新品以上の快適さだと褒められることも少なくないんです。」と咲寿さんが熱く語ってくれました。
横浜洋家具の伝統を受け継ぎ140年の歴史の中で、家具とヒトの豊かな関係を築いできたダニエルの家具は、家具を使う人の想いや歴史を重ねていける家具だと感じました。職人たちの想いが詰まった家具は、もはや家具の概念を越えているように感じました。海を渡り、洋家具発祥となったダニエルの家具。たくさんのお客様の家具物語を受け継ぎ、これからも洋家具の魅力を発信して欲しいなと思いました。
咲寿さん、職人のみなさん、お忙しいところありがとうございました。